第103回恵迪寮祭 世界は寮(ここ)を天才(バカ)と呼ぶんだぜ!

寮歌

都ぞ弥生

明治四十五年度寮歌
横山芳介君 作歌
赤木顕次君 作曲

前口上
  楡陵謳春賦
吾等が三年みとせを契る絢爛のその饗宴うたげはげに過ぎ易し。
然れども見ずや穹北に瞬く星斗永久とわに曇りなく、
雲とまがふ万朶の桜花久遠くをんに萎えざるを。
寮友ともどちよ徒らに明日の運命さだめを歎かんよりは
楡林に篝火を焚きて、去りては再び帰らざる若き日の感激を謳歌うたはん。

一.
都ぞ弥生の雲紫に 花の香漂ふ宴遊うたげむしろ
尽きせぬ奢に濃き紅や その春暮れては移らふ色の
夢こそ一時青き繁みに 燃えなん我胸想ひを載せて
星影冴かに光れる北を
人の世の 清き国ぞとあこがれぬ

二.
豊かに稔れる石狩の野に かりがね遥々はるばる沈みてゆけば
羊群声なく牧舎に帰り 手稲のいただき黄昏たそがれこめぬ
雄々しく聳ゆるエルムの梢 打振る野分のわき破壊はゑの葉音の
さやめくいらか久遠くをんの光り
おごそかに 北極星を仰ぐ哉

三.
寒月かかれる針葉樹林 橇の凍りて物皆寒く
野もせに乱るる清白の雪 沈黙しじまの暁霏々ひひとして舞ふ
ああその朔風へう々として すさぶる吹雪の逆巻くを見よ
ああその蒼空そうくうつらねて
樹氷咲く 壮麗の地をここに見よ

四.
牧場まきばの若草陽炎かげろふ燃えて 森には桂の新緑きざ
雲ゆく雲雀に延齢草の 真白ましろの花影さゆらぎて立つ
今こそ溢れぬ清和の陽光ひかり 小河のほとりをさまよひゆけば
うつくしからずや咲く水芭蕉
春の日の この北の国幸多し

五.
朝雲流れて金色こんじきに照り 平原果てなきひんがしきは
連なる山脈やまなみ冷瓏として 今しも輝く紫紺の雪に
自然の藝術たくみなつかしみつつ 高鳴る血潮のほとばしりもて
たふとき野心のをしへ培ひ
栄え行く 我等が寮を誇らずや

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